リガードの防蟻・シロアリ対策について

リガードの防蟻・シロアリ対策について

はじめに:シロアリとは

そもそもなぜ防蟻が必要なのでしょうか?
住宅には国土交通省が定める「住宅性能評価制度」という住宅の性能を表す申請制度があります。
評価項目は大きく分けて10個あります。

  1. 構造の安定地震や風邪の力が加わった時の壊れにくさ
  2. 火災時の安全火災が発生した時の避難のしやすさや燃えにくさ
  3. 劣化の軽減木材の腐食、鉄の錆など建物の劣化のしにくさ
  4. 維持管理への配慮配管などの日常管理(点検、清掃、修繕)のしやすさ
  5. 温熱環境防暑、防寒、冷暖房時の省エネルギー
  6. 空気環境ホルムアルデヒド等、化学物質の抑制。室内の空気の清浄さ
  7. 光・視環境採光などの視覚性
  8. 音環境騒音の防止
  9. 高齢者等への配慮バリアフリー、介助、移動のしやすさ、転倒、転落事故防止
  10. 防犯対策住宅の開口部の外部からの侵入のしにくさ

この3番に該当する「劣化の軽減」の評価方法の中に防腐・防蟻処理が該当します。住宅性能評価制度の利用を前提とするリガードではこれらの基準をクリアしなくてはなりません。

ではシロアリとは何なのでしょうか。
その生態や習性を解説します。

シロアリは、木の幹に豊富に含まれる「セルロース」を栄養とする数少ない生物で、倒木などを土に還すことから自然界の食物連鎖において重要な役目を担っています。

名前に「アリ」とついているため、黒アリの仲間と思われている方もいるかもしれませんが、実は黒アリとは全く縁が無い別の種類の昆虫です。
それどころか、シロアリにとって黒アリはシロアリを捕食する恐ろしい天敵です。

シロアリと黒アリの違い

1. 触角
アリの触角は「く」の字状をしていますが、シロアリの触角は真珠のネックレスのように数珠状をしています。
2. 翅
アリの翅は前翅が後翅より大きいのに対して、シロアリの翅は4枚ともほぼ同じ大きさ・同じ形をしています。
3. 腰
アリは腰の部分が細くくびれていますが、シロアリはくびれはなく寸胴です。

シロアリはゴキブリ目シロアリ科に属する昆虫で、ゴキブリを先祖としています。対してアリの先祖はハチ類です。
アリやハチは胴体がくびれているのに対し、シロアリはずん胴で、触角の形状や羽アリの羽の形も違います。

シロアリはゴキブリが先祖ですが、実際の生態・習性は蟻(クロアリ)と非常に似ています。
蟻(クロアリ)もシロアリも両方とも「女王アリ」をトップにコロニー(生活する集団)を形成し、働きアリ・兵隊アリ・生殖アリと役割を分担して集団で生活しているためです。

それぞれ役目がありますが、木材を食べるのは【働きアリ】のみで、食べた木を巣に運び他の役割のアリたちへ分配します。

シロアリは先述した通り、木材を主食とする昆虫なので主に土壌や地下、住宅内の木材や湿った場所に生息しています。

暗くて湿気があり暖かい場所を好むことから、特にこれらの条件がそろっている床下などに住みついて被害を及ぼします。

見かける機会が多いのは基本的に春から夏にかけてすが、活動時期は1年中です。見かける機会が多いのは基本的に春から夏にかけてすが、活動時期は1年中です。
繁殖力も強く、初めは数頭でも1年後にはかなりの数に膨れ上がります。

シロアリの分布

シロアリは主に4種類あり、最も多くのシロアリ被害を引き起こしているのは、北海道の北部を除く日本全域に生息している「ヤマトシロアリ」です。

ヤマトシロアリの分布図

他に、千葉県以西の海岸線に沿った温かい地域、南西諸島、小笠原諸島を主として生息する「イエシロアリ」、

イエシロアリの分布図

全国に点在して生息する「アメリカカンザイシロアリ」、

アメリカカンザイシロアリの分布図

奄美大島以南に生息する「ダイコクシロアリ」がいます。

ダイコクシロアリの分布図

同じシロアリでもそれぞれの種で特性に少々違いがあります。ヤマトシロアリとイエシロアリは特に湿った木材を好み、被害を与えます。
一方、アメリカカンザイシロアリとダイコクシロアリは、木材に含まれるわずかな水分で生きられるため、乾燥した木材や木製家具などに被害を与えます。

シロアリは、新しい巣をつくるために飛び立つ習性があります。そのため、家の周囲で羽がはえたシロアリ(羽アリ)を見かけたら、巣をつくられる危険が迫っているかもしれません。先述した日本に生息するシロアリの中で特に日本の家に被害を与えているのが、ヤマトシロアリとイエシロアリです。

ヤマトシロアリとイエシロアリの羽アリを見たならば、特に注意が必要です。
またイエシロアリは自分で水を運ぶことができ、2階以上や屋根裏にも巣をつくります。そのため被害が拡大しやすいという特徴があります。
更に木材に限らず、コンクリートやプラスチックにも穴をあけます。

その為、住宅を建てる際には必ず対策しなければなりません。シロアリ対策することを防蟻(ぼうぎ)と言います。

主に薬品の塗布など、住宅の土台や構造材にシロアリなどの被害を防ぐ処理を施します。一般的に「防蟻処理」「防蟻対策」と呼ぶこともあります。(以降【防蟻処理】と言います。)

使用する薬剤は、シロアリを駆除する殺虫剤(駆除剤)のほかに、シロアリを寄せ付けない忌避剤があります。基本的には下記2点が防蟻処理の必要な箇所です。

①土壌
②基礎天端から1.0m以内の高さにある外部に面している木材に対しての木部

リガードでは4種類の防蟻処理の用意があります。(リガード通称)

  • 薬剤
  • 天然ピレトリン
  • エコボロン
  • エコボロン(棟まで塗布)
リガードの対応してる防蟻処理

上記と加えて過去にリガードでは採用実績のある【防蟻・防湿シート】があります。

リガード標準の防蟻処理

リガードの標準として設定されるいるのが下記2つです。

  • 薬剤
  • 天然ピレトリン

1.薬剤

リガードの標準に設定されている防蟻処理です。

リガードの対応してる防蟻処理:薬剤について

処理方法は基礎部分にニチノ―グレネードMC、木材部分へハチクサンという薬剤を散布します。

どちらも化学物です。
化学物というと健康被害などの心配を想像する人も多いですが、上記薬剤は試験データによりその安全性が確認され、(公社)日本しろあり対策協会で認定された人体にも環境にも非常に安全性の高いものです。

※(公社)日本しろあり対策協会とは:シロアリ防除施工業者による調査・予防が適正におこなわれるために、1959年(昭和34年)につくられた団体です。

またシックハウスの要因となる成分を薬剤は一切使用していませんので、人体・環境にも安全性が高いものを使用しています。
どちらの薬剤も匂いが少ないことが特徴です。

薬剤について

散布の様子

防蟻の工事
防蟻の工事

上記化学薬剤のメリットは木材部分に吹き付けたり塗布したりするほか、浸したり穴をあけて注入したりなど、家の中の様々なシロアリ駆除、予防に利用できます。一方でデメリットとしては化学物なのでアレルギーがひどい方、化学物質過敏症の方は、症状が出る可能性があります。
保証期間は5年で、5年ごとのメンテナンスが必須です。ご希望の方は再度5年保証のある再施工が可能です。
参考)初期コスト(税抜き)(5年保証):約85,000円 再施工(5年保証):約170,000円

2.天然ピレトリン

薬剤がベースになっていますが、木部へ使用する薬剤が異なります。
基礎部分へ散布される薬剤と変わらずニチノ―グネレードMCですが、木材部分へは天然成分を有しているピレトリンMCを散布します。

天然ピレトリンについて
天然ピレトリン商品画像

天然物としては唯一【日本しろあり対策協会】の認定が取得されている防蟻剤です。
環境にも配慮されたものであり、薬剤よりも安全性を優先される方へオススメできるものです。
※天然ピレトリンMCのMC(マイクロカプセル)を精製する過程で界面活性剤などの化学物を使用しているため化学物質に過敏な方にはお勧めできません。

メリットは天然物を木部へ散布することで化学物質による健康被害が薬剤よりは抑えられるため、安価な天然材を使用したい方にはお勧めのプランです。
一方デメリットとしてはAよりも初めにかかるコストが上がり、Aの薬剤同様に5年ごとのメンテナンスが必須で、ご希望の方は再度5年保証のある再施工が可能です。
参考)初期コスト(5年保証)(税抜き):約113,000 再施工(5年保証):約170,000円

どちらも初めにかかるコストを抑えたい方にお勧めです。

オプション:エコボロン

エコボロンPROとはホウ酸を主原料とする木材保存剤です。

エコボロン商品画像

ホウ酸は、アメリカ大陸やトルコ地方の地下鉱脈から採掘される無機物の自然界に存在するミネラル成分で、安全で環境に優しく、古くから木材の防虫・防カビに使用されてきました。
ホウ酸はその保護能力の高さで世界中に良く知られています。
人は野菜を食べたり水を飲んだりすることで、毎日ホウ酸を摂取しています。

ホウ酸を必要以上に摂りすぎた場合、人間をはじめとするほ乳動物は腎臓の浄化作用により尿と一緒に体外に排出します。
しかし、腎臓を持たないほ乳動物以外の生物が摂取し続けると体内に蓄積し、エネルギー代謝が止まって死んでしまいます。

上記の作用を利用して、「シロアリには有効かつ人間には極めて無害」な薬剤が実現されているのがエコボロンPROの特徴です。

また、揮発分解しないため塗布した薬剤が、木材が有する僅かな水分へ反応し浸透するため半永久的に効果が持続できることも大きなメリットです。
初期コストは張る反面、ランニングコストを抑えられ、結果としてトータルコストを抑えられます。

エコボロンPROの薬剤を使用した防蟻処理は二種類の処理方法があるので、下記で説明します。

3.エコボロン

リガードの仕様としてオプション設定のあるエコボロンPROを用いた防蟻処理です。

エコボロンについて

処理方法は、基礎の天端から1mまでの外壁の軸組及び下地材へエコボロンPROを塗布+アルトリセットという薬剤(化学物)で玄関前・勝手口ポーチ部分に土壌処理しています。

上記でメリットを説明したホウ酸にもデメリットがあります。
土壌への定着が良くないため、雨水などによって溶け出してしまうことです。(水溶性)
その為、土壌処理には化学剤を使用します。

アルトリセットもリガードサポートで使用している化学物薬剤と同様、(公社)日本しろあり対策協会での認定と(公社)日本木材保存協会の認定も取得している薬剤です。

※(公社)日本木材保存協会とは:昭和53年(1978)に社団法人化され、木材保存技術の調査研究、規格・基準の作成、木材保存士・木材劣化診断士の資格認定、木材保存剤の認定などを行なっています。

毒物及び劇物取締法の「毒物」、「劇物」どちらにも該当せず、消防法上「危険物」にも該当しません。
また、臭いも極めて低くシックハウスの要因となる成分も含有していません。
建物周り、基礎+木部(基礎点端から1mまで)に防蟻処理を施しており、前の単元で説明したA・Bの防蟻処理どちらと比べてもよりしっかり対策をしたいお客様に向いています。
参考)初期コスト(10年保証)(税抜き):約195,000円 再施工費(5年保証):約205,000円

4.エコボロン(棟まで塗布)

リガードとしてオプション設定はしていませんが、対応可能な防蟻処理です。

エコボロン(棟まで塗布)について

※カンザイシロアリとは:乾いた木材中の僅かな水分で生育できるシロアリのことを言います。
元々日本には居なかった種ですが、木材や家具の輸入によって運び込まれました。

土の中に巣をつくるヤマトシロアリやイエシロアリと違って、加害した木の中に巣(孔道)をつくり、
蟻道や蟻土を作りません。
また、温度変化や環境湿度の影響を受けにくいとされています。主には暖かい関東以西に定着していると言われています。
従来のシロアリとは異なり、床下からではなく飛来により小屋裏などから侵入するため従来の床下中心の対策方法では対応することが難しい種です。

処理方法は、3と大きく変わりありませんが、エコボロンPROの塗布部分が基本的な「基礎天端から1mまでの木部」の最低限ではなく、内部の木材も含め全面塗布となります。

その為、飛来するカンザイシロアリの予防対策効果が見込めます。
カンザイシロアリに対応するためにも全面塗布をしているため、メーカーより保証が為されています。
健康被害・特にカンザイシロアリに予防意識が高い方にお勧めです。
参考)初期コスト(10年保証)(税抜き):約500,000円 再施工費(5年):約205,000円

このプランは施工より10年間はカンザイシロアリ対策保証期間となりますが、それ以降保証延長はできません。(再施工は可)

どちらとも安全性・効果共に高い施工方法のため、初めにかけるコストは高いですが、シロアリに強くご不安を抱かれているお客様にはお勧めです。
半永久的な効果を見込めるので、ランニングコストは比較的抑えられます。(保証延長最大1回・5年のみ)

防蟻・防湿シート

最後はリガードで採用実績のある、防蟻・防湿シートについてお伝えします。
このシートは着工の初めに施工を行うものです。

防蟻シート商品画像

施工方法は下記の様に基礎下へ施工します。

防蟻シート詳細図

上記シートのみの施工ではシロアリ保証をしていないため、必ず他の防蟻施工と共に使用します。
シート自体に防蟻効果と防湿効果があるため、床下からのシロアリの侵入と防ぐことと、防湿効果があるため基礎コンクリートの強度が長期的に見込めます。
また、シロアリの侵入を防げます。

基礎の施工時には防湿シートの施工をしているため、大きな差があるとは言えませんが、他の防蟻処理に比べると床下からの侵入を直接防ぐ効果があります。

前単元までに説明した薬剤は基本的に木材がシロアリに食べられた際に明確な効果を示しますが、上記のシートは忌避性と言って、侵入を回避することが目的にあります。

ただ、こちらも床下からの侵入を防ぐ目的なため飛来したカンザイシロアリの侵入は防ぐことはできません。
併せて上記でも記載した通り、シロアリ保証が出ないものなため他防蟻施工と共に使用するため金額的なメリットも見込めません。
参考)施工費(保証無):約80,000円

以上のことから、利点はあるもののオーバースペックとなる為、リガードとして標準採用していません。
また、着工時に万が一防蟻・防湿シートの施工することを共有できていない場合には基礎工事のやり直しとなってしまうリスクもあります。

それぞれの比較とご提案するお客様の状況実例

それぞれの防蟻処理の特徴や価格差はなんとなくでも掴んで頂けたでしょうか。最後にまとめと、実際に採用された実例を紹介します。

防蟻対応:まとめ

それぞれの処理方法とコスト、保証期間、カンザイシロアリへの対応が可能かを表記しています。
それぞれのメリットデメリットは各単元で伝えた通りですが、オススメできるのはどういった場合かを改めて記載します。

  • 1.薬剤・・・標準なので比較的安価。とにかく費用を抑えたい方にお勧め。
  • 2.天然ピレトリン・・・費用は抑えたいが、化学物質による健康被害も軽減したい方にお勧め。
  • 3.エコボロン・・・トータルコストを抑えたい、かつ長期的な効果を期待する人におすすめ。また、健康被害を避けたい人にもお勧め。
  • 4.エコボロン(棟まで塗布)・・・とにかく防蟻処理を徹底したい人、もしくはカンザイシロアリを強く気にする方にお勧め。

採用実績としては、おおよそ1:92.5%>3:6.5%>4:1%>2:0%の比率です。

圧倒的に多いのは標準として設定している1の薬剤です。(特にご要望が無ければそのまま標準採用となります。)
次に多いのが天然ホウ酸を採用した3のエコボロンです。
科学物質を気にして天然物を採用するのであれば「トータルコストの安い3にしよう」と決める方が多いです。
実は初期コストと15年経った時の初期コスト+ランニングコストを考えると3より2の方がコストが上回ってしまいます。
その上、3(と4)は半永久的な効果を見込まれています。

どうしても初期コストに資金を割けられない、という方以外で天然物の薬剤である方が良いという方であれば、3.エコボロンをオススメするのが良いでしょう。

実際のリガードの実例を交えて、どのようなお客様へオプションの防蟻処理をご提案したのか紹介します。

4:エコボロン(棟まで塗布)ご採用・・・カンザイシロアリの対策 O様邸:エコボロン カンザイシロアリ保証
100年もつ家を本気で考えられていて、シロアリ対策をしっかりしておきたいとカンザイシロアリをとても気にされていたお客様。
カンザイシロアリの特性を理解された上で上記のご要望を受け、担当営業よりご説明し採用いただきました。
3:エコボロンご採用・・・猫を飼われている K様邸:エコボロン10年保証
愛猫との暮らしを想定されていたお客様。化学成分による愛猫への影響を気にされていたことから、天然ホウ酸のエコボロンを提案し、ご導入頂きました。
3:エコボロンご採用・・・揮発性を気にされていた I様:エコボロン10年保証
知識があり、経年揮発しない防蟻処理を求めていらっしゃったお客様。床下エアコンを採用されており、床下から化学成分が吹き上がることを気にされていたことから、天然ホウ酸のエコボロンを提案し、ご導入頂きました。