年老いた自分に今の自分が手助けできること。

意外に関係ある「家づくり」と介護の話

介護用品というと、いざ介護が必要になった時に必要な用具を揃えればよく、あまり家づくりとは関係がないと思われる方もいるかもしれませんが、実は家づくりと介護は密接に関係しています。

筆者は中途障害なので、障害者になる前は健常者として生活をしていました。
健常者の頃もよく怪我をしていたので、エレベーターなしの4階の物件に住んでいた頃は松葉杖になり階段を上がれず、引っ越しを余儀なくされました。

また、車椅子生活になり実家に戻ってきても、古い造りの家なので廊下の幅が狭く洗面所まで行くのにコツが必要だったり、トイレも車椅子のままは入れないのでここもコツとちょっとした改造が必要でした。

手すりを取り付けたり、新たな介護用具を取り入れたりすることはどんな家でも可能です。
しかし、廊下の幅や家の中の段差等は、後から作り変えることができなかったり、非常に難しかったりします。

介護などの先のことまで考えて家づくりをすることは難しいですが、例えばちょっと足を怪我してしまった時など、少しの期間でも住む家が生活しにくくなるととても不便です。

家づくりの際には、健康な時の住みやすさだけでなく、怪我や病気などでちょっと体が弱ってしまう時の生活も想像しておくと、長く住む上でより快適に過ごせるようになるかと思います。
そしてそれは将来介護が必要になった際にももちろん役に立つことになるのです。

「家づくり」で未来の自分への気遣いを。

お風呂に車椅子

お風呂は介護する側にとっても負担の大きい場所です。
過去記事でも述べたように、高齢者や障害者でも環境を整えさえすれば、一人でできたり、少ない介助でできたりすることもあります。

筆者も最初はこちらの過去記事にあるように、シャワーチェアを使用せずに介助なしで入浴していました。
現在は身体機能の低下により、水周り用車椅子を利用して、訪問看護を利用してシャワー浴を行なっております。

水周り用の車椅子を利用することで、電動ベッド上で着替えを行い、そのまま車椅子に乗って浴室へ、そしてそのままシャワーを浴びることができるため、身体の負担は減りました。
また、シャワーチェアを利用していた頃よりも楽になったと看護師さんに言われています。

しかし、古い浴室のため、洗い場は車椅子で幅が埋まってしまい介助者も濡れてしまいます。

一般的に、介助するためには洗い場の奥行きは1.2m以上、幅は0.8m以上が望ましいとされています。
また、出入り口の段差は無くし、床は滑りにくい素材に、出入り口の幅も車椅子が通れるように0.8m以上確保し、さらに引き戸だとより良いでしょう。

この広さを確保すると、例えば足を怪我してしまい、洗い場に椅子を置いたりしても安心して入浴ができます。

この条件に当てはまらない筆者の家は、介助者がずぶ濡れになってしまうのです。

電動ベッド

お風呂で車椅子を使用するときと同様、寝室にもスペースの確保が必要になってきます。
ベッドを置いても部屋の中で車椅子が動けるように、車椅子が通れる幅を確保しなければなりません。
また、車椅子が十分に旋回できるスペースも必要です。車椅子の大きさにもよりますが、旋回にはだいたい1.5m程度必要になります。

また、車椅子利用者はベッドも電動式のものを利用する場合が多いです。
電動リクライニングベッドは、ベッドの高さを調整したり、背上げ機能や足上げ機能がついており、ベッドから車椅子への移乗、起き上がりの補助に役に立ちます。

高さの調整ができる場合は、移る側が低くなるようにすると安全に移乗できます。
ベッドから車椅子の場合はベッドを車椅子の座面より高く、車椅子からベッドの場合はベッドを車椅子の座面より低く設定します。

電動ベッドを置いても車椅子が旋回できるスペースを確保するためには、家づくりの時点で寝室を広めに設計しておく必要があります。

どんな時でも住みやすい我が家であるために

一生涯住める家づくりにはまだ若い今ももちろんですが、親と住むことになった場合。自分が年寄りになった場合も考慮して家づくりするとQOL(クオリティーオブライフ)に役立ちます。
リガードの家は、「アトリエ建築家」とともにお施主様のライフスタイルに合わせて家づくりを行うセミオーダー住宅です。

将来を見据えたプランニングも行なっておりますのでぜひお気軽にご相談ください。

著者プロフィール

maitoran(堀江麻衣)
ライター 堀江麻衣さん近影

不動産分野全般に執筆実績と関心のあるフリーライター。
2014年に中途で障害を持ち、以来「日々の暮らしの”不便”を”便利”に変える」をモットーに、家づくりについて研究中。
日々、住まいを改造・改築しながら、快適な家づくりを目指している。
趣味:スケート観戦、ハンドメイド(羊毛フェルトでなんでも作る)、間取り図を見ること、旅行。
2匹の犬と暮らして溺愛中。

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