車椅子利用者の部屋の間取り、家具の配置や床材について

室内の動線次第で車椅子生活は良くも悪くも変わる

車椅子での生活をするためには、家の中の廊下やドアの幅、形状に注意をしたり、室内の段差を解消するなどの対策が必要になりますが、それと同じくらい「家具の配置」も重要になります。

せっかく車椅子で通れる幅が確保された設備の整った家だったとしても、家具が邪魔をして動線が確保できないとなってしまったら意味がありませんよね。

家具を置くと当然部屋は狭くなり、通れる場所は制限されます。
しかし、当然ですが家具は生活に必要不可欠なものです、車椅子の通行のためになくすと言うことはできません。(当たり前ですが・・)
もちろん、必要のない家具は減らすと言うことは大切にはなりますが、必要な家具の配置を工夫することで、車椅子利用者の生活のしやすさ、また介助する側の介助のしやすさは大幅に改善される場合があります。

車椅子からベッドへの移乗をしやすく。

車椅子からベッドへの移乗の方法は、人によってやりやすい方法が異なります。
立ち上がることができる場合は移乗する場所に手すりを設けて立ち上がるためのスペースを確保する、ベッドにスライドするように移乗する場合は車椅子とベッドの隙間を作らないようにするなど、その方の移乗方法に合わせたアプローチ方法を考える必要があります。

その際に重要なのは車椅子とベッドの向き、角度です。

片麻痺であったり障害の程度に左右差があったり、または利き手など、移乗のしやすい方向からスムーズにアプローチができるようにベッドを設置し、そこにスムーズに車椅子でアクセスできる動線を考えます。

移乗の際に介助が必要であったり、リフトを導入したりする場合は、介助するためのスペースの確保、介助者が移乗をさせやすい向きを考える必要があります。

移乗の方法、間取りによってベッドが置ける場所に制限があるなど、ベッドの置き方に正解はありません。
だからこそ余計に迷ってしまうのですが、筆者(mai)の場合は電動ベッド(介護ベッド)を導入する際にデモ機で色々試しました。

配置には制限のある6畳間ですが、ベッドの向きや簡単な家具の移動などで移乗しやすい向き、そのための車椅子のアクセス方法を頭で考えてベッド等をイメージの通りに配置をしていただき、実際に試して見ます。

頭で考えてシミュレーションしていても、実際にやってみると違うと言うこともあります。

可能であればケアマネージャーやPTやOT、福祉住環境コーディネーター等の専門家に意見を聞きながら、家の間取りと障害の程度にベストな方法を探していくのが良いでしょう。

バリアフリー住宅でこだわりたい「床材」のこと

車椅子は、漕いで見るとわかるのですが、床の材質によって漕ぎやすさが変わってきます。
介助式の車椅子を押す場合も、車椅子のタイヤのゴムと床の摩擦によって押しやすい、押しにくいと言うのは感じられます。

毛足の長いカーペットや畳などは、力が柔らかい床に吸収されてしまい、うまく進むことができません。
また、毛足がタイヤに絡まってしまったり、畳を傷つけてしまう場合もあります。

車椅子の走行を考えた場合、フローリングが一番動きやすくはなりますが、そのままでは冬場は寒いと感じる同居家族もいらっしゃるかもしれません。

床暖房を敷いたり、無垢材で床のひんやり感をなくすなどの工夫で、双方快適に過ごせるのではないでしょうか?

間取り、家具、床材にこだわれば快適な住宅に

車椅子で生活をする上で生活のしやすさに直結する部分は、上記の間取り・家具・床材です。
これらは歩いて生活をする家族にも重要な要素です。
注文住宅であれば、それぞれのお施主様家族のライフタイルに合わせた施工が可能なので、車椅子利用者も、また家族も全員が快適に過ごせる住まい作りが可能です。

また、現在は車椅子利用のかたがいらっしゃらない場合でも、将来に備えた家づくりを考えるのであれば、あらかじめ廊下の幅を広くする、室内の段差をなくすなど柔軟に対応できると思います。

末長く過ごすことになる住まい、将来を見据えていつまでも快適に住むことができる家づくりを目指したいですよね。

著者プロフィール

maitoran(堀江麻衣)
ライター 堀江麻衣さん近影

不動産分野全般に執筆実績と関心のあるフリーライター。
2014年に中途で障害を持ち、以来「日々の暮らしの”不便”を”便利”に変える」をモットーに、家づくりについて研究中。
日々、住まいを改造・改築しながら、快適な家づくりを目指している。
趣味:スケート観戦、ハンドメイド(羊毛フェルトでなんでも作る)、間取り図を見ること、旅行。
2匹の犬と暮らして溺愛中。

・「車椅子ライターmaiのひとこと」一覧はこちら。