バリアフリーはハード(家そのもの)だけでなくソフト(家族の意識)で実現しよう

「廊下の幅」「ドアの幅」だけがバリアフリーじゃない

車椅子生活のための、バリアフリー住宅というと、家の間取りであったり、建具の位置、ドアや廊下の幅、室内の段差をなくすなどのハード面の対策を思い浮かべる方が多いと思います。

実際に廊下が車椅子より狭い幅だったら通れないので、ハード面はとても大切なことです。

しかし、いくらハードをしっかりしても、ソフト面の対策をおろそかにしてしまうと、結局は車椅子での生活を上手に送れないと言うことにもなってしまいます。
例えば、せっかく車椅子が通れる広い幅の廊下にしても、そこに観葉植物を置くなどで幅を狭めてしまえば、通ることができません。観葉植物のように「ずっと置くもの」は気をつけているかもしれませんが、買い物袋をちょっとの間廊下に置くとか、掃除機を廊下に置いてしまうとか、普段のちょっとした行動が実は車椅子にとっては大敵だなんて場合もあります。

車椅子利用者と生活する上で、家族全員で注意すべき点、つまり「ソフト面での対策」について今回は見ていきたいと思います。

実際にあった家族とのトラブル

筆者(mai)は車椅子生活になった後に、実家に戻って暮らすことになりました。
車椅子は段差が苦手であったり、車幅があるなど、生活には配慮が必要な点があります。しかし、今までそのような配慮を必要とせずに生活をしていた方にとっては、生活習慣を変えるのはなかなか難しい部分もありますよね。

ついやってしまう小さな事が、車椅子通行の妨げとなってしまう場合があります。

スリッパの脱ぎっぱなし

急いでいてつい廊下に脱ぎっぱなしにしてしまうスリッパが、結構車椅子の通行の妨げになったりします。
だいたいそんな時は「忙しくて脱ぎっぱなし」になっていることが多いので、スリッパの片付けを頼むといらっとされてしまったりして、トイレなどの用事であれば通行を諦めることも。

ゴミ出し用ゴミ袋

最近の家では勝手口がない場合も多く、玄関からゴミ出しをする家庭が多いと思いますが、朝ゴミ出しをするために玄関前の廊下や玄関先にゴミ袋が置いてあると、その分幅が狭くなって車椅子で通行できません。

出勤前など忙しい時間にゴミ袋でブロックされてしまうと、慌ただしさからご家族と喧嘩になってしまうこともあるかもしれません。

その他にも洗濯を干そうと廊下に置いた洗濯カゴであったり、掃除機であったり・・・

家事が忙しいとつい置き忘れてしまう、置いたまま別の用事をしてしまうことがあるというのは車椅子利用者側もわかっているからこそ、不便さを感じていても家族に対してこのようなことを強く伝えられないなんてこともあります。

お互いにお互いの生活についてわかりあうことができれば、このようなトラブルも減ってくるかと思います。
車椅子側はそんな時のために時間に余裕を持って行動したり、家族側は車椅子が通行するのに必要な幅を理解するようにしたり・・・

そうやってお互いに歩み寄ることで、このような家庭内のちょっとしたトラブルを減らしていくことは可能ではないかと考えます。(完全になくすことは難しくても・・・)

ますますソフト面の対策が重要になる「りんご型住宅」

最近は、小さな部屋を廊下でつなぐ「ぶどう型住宅」に代わって、細かく仕切らずに大きな空間を有効活用する「りんご型住宅」が増えてきています。

りんご型住宅ではリビングやキッチンなどを大きな一つの空間として設計するため、都心部の限られた土地面積を有効活用することができます。

バリアフリーの視点で見ると、廊下ではなく大きな空間を移動すると言う形になるので、家具の配置であったり家族の荷物の置き場所であったりと、車椅子が通れる幅の確保がより重要視されてくるでしょう。

なおリガードさんでは、「建築家と建てる家」として建築家と話し合いをしながらお施主様家族のライフスタイルに合わせて家づくりを進めています。

建築家は空間設計のプロなので、車椅子の通り道確保を考慮したプランニングもお手のものでしょう。

障害のある家族もない家族も、お互いに気持ちよく暮らせる家、それが真の「バリアフリー住宅」であると思います。

著者プロフィール

maitoran(堀江麻衣)
ライター 堀江麻衣さん近影

不動産分野全般に執筆実績と関心のあるフリーライター。
2014年に中途で障害を持ち、以来「日々の暮らしの”不便”を”便利”に変える」をモットーに、家づくりについて研究中。
日々、住まいを改造・改築しながら、快適な家づくりを目指している。
趣味:スケート観戦、ハンドメイド(羊毛フェルトでなんでも作る)、間取り図を見ること、旅行。
2匹の犬と暮らして溺愛中。

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