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車椅子利用者からみた、バリアフリー玄関を設計する重要性

玄関の段差解消から始める、バリアフリーの住宅設計

玄関は家の中と外をつなぐ大切な場所です。
玄関には段差のある家が多いですが、普段普通に歩いて生活している人にとっては気にすることのない段差であっても、杖や車椅子を利用している方にとっては、それが大きなバリア(障壁)となり、玄関から外の世界へ踏み出すことが難しいという場合があります。

玄関から外に出るのが難しくなると、だんだんと外に出るのが億劫になってしまい、引きこもりがちになってしまいます。
引きこもりがちになってしまうと、体を動かすことが少なくなるので、今自由が効く身体の機能まで衰えてしまう危険性もあります。

足腰の不自由な方にとって、玄関のバリアをなくすということはとても重要です。
「玄関の利便性」と「外出の頻度」は比例してくる、と言っても過言ではないかもしれません。

本記事の筆者(mai)のこと。

筆者は中途障害で車椅子生活になり、現在はフリーライターとして生計を立てています。もともと不動産に対して興味があったことから、お仕事を通じて工務店の「リガード」さんと出逢い、現在は記名でこのブログの執筆をさせて頂いています。
現在、筆者の家の玄関前にはスロープを設置しておりますが、スロープを設置する前は玄関の外に出ることができず、引きこもりがちになり、精神的にもかなり追い詰められた状態でした。
しかし、スロープを設置したことで、気軽に外に出られるようになったので、表情も明るくなった…とみんなに言われるようになりました。

外に出ることができるということは、当事者にとって自信につながります。
一人で、または少ない介助でできる行動範囲を広げることがバリアフリーを設計する上で大切なことだと思います。

バリアフリー玄関の重要性 – いつでも外に出られる家に

玄関にバリアがあると、外に出るには家族やヘルパーさんに手伝ってもらわなければならなくなります。
そうなると、外に出たいと思った時に自由に外に出ることができません。また、外に出たいと思っても、「家族に負担がかかってしまうから」と中々言い出せないものです。
そうすると、自然と引きこもり生活になってしまいます。

また、ご家族も玄関にバリアがあると介助をするのに大きな負担がかかります。玄関の時点で「大変だな」と思ってしまうと、それより先の外に連れ出すのは難しいのではないかと思ってしまい、結果、外に連れ出すことが減ってしまうということになります。

玄関のバリアがなくなると、当事者も一人で、または少ない介助で外に出ることができるようになるので、気軽に外出を楽しむことができるようになります。
また、介助をするご家族も、介助がとても楽になりますので、「障害があってもこんなに自由にできる」ということをきっと実感していただけると思います。

今までできたことができなくなった・・・
そう思うと精神的にもかなり落ち込んでしまいますし、精神疾患などを併発してしまう恐れもあります。
しかし、玄関のバリアを取り除くことで外への扉が開けると、今までできたことが変わらずできるようになります。
友達に会ったり、街に出かけたり、外で働いたり・・・
そのような生活をするためには、まずは玄関周りのバリアフリー化を進めることがとても大切なことなのです。

バリアフリー玄関の設計

日本の住宅では、玄関の段差を完全になくした家はほとんどありません。
その理由の一つは、日本では古来から土間というスペースが重要視され、家では靴を脱ぐ習慣があるという伝統的なものです。
もう一つは、配管スペースの確保や、家の維持管理対策のために床下のスペースを設けるには、GLとFLの差を設けねばならないことです。「段差をなくす」ことは、家全体の設計に関わることになるのですね。詳しくは以下の記事で紹介されています。

・バリアフリーのための「段差のない家」 設計上大切なGLとFLって?

フルフラットの玄関もないわけではありませんが、その場合は代わりにアプローチにスロープを設置する必要があります。スロープの傾斜はバリアフリー基準に基づき、1/12を目安とした非常に緩い傾斜にすることが求められます。すると十分な長さ(水平距離)が必要になってきますので、土地が狭い場合には注意が必要になります。

玄関の広さについては、車椅子が旋回できる十分なスペースが必要です。車椅子で玄関を開けて家に入り、鍵を閉めるとなると旋回が必要になるからです。また、「外用」と「家用」で車椅子を使い分けている場合は、外用の車椅子を置くスペースも確保する必要があります。
また、玄関に靴が置いてある状態だと車椅子で靴を踏んでしまうので、ご家族は使用した靴を靴箱に収納するように、協力をお願いしましょう。設備だけでなく、このような小さな心配りが当事者、そしてご家族にとってお互いに住みやすい家にするためには大切です。

「もしも」を想定したバリアフリー住宅の設計

現在、ご家族に足腰の不自由な方がいらっしゃらない場合でも、新築住宅に住んでいる何十年もの間に状況が変化する可能性はあります。それは、どのような家族にもあり得ることです。
万が一の未来に備えて、あらかじめバリアフリー対応を備えた家を設計することで、設備が必要になった時にスムーズに新しい生活を始めることができます。

筆者のように中途で障害を負うと、今まで通りの生活ができないストレスが非常に重くのしかかります。
最初に壁を見てしまうと心も塞ぎ込んでしまいがちです。
万が一の備えをしておくことで、障害を持った方が「思ってたよりも自由に生活できる」と思えると、その後の生活が明るく見えることでしょう。

家は生活に最も密着した備えです。
外の空間のものを自分で変えることはできませんが、ご自身の家なら家族の住みやすい形にカスタマイズすることができます。
万が一の将来を考えて家づくりをすることで、ご自身やご家族が将来安心して暮らすことができることでしょう。

何十年も住まう家だからこそ、ずっと安心して暮らせる家づくりを考えてみませんか?

著者プロフィール

maitoran(堀江麻衣)
ライター 堀江麻衣さん近影

不動産分野全般に執筆実績と関心のあるフリーライター。
2014年に中途で障害を持ち、以来「日々の暮らしの”不便”を”便利”に変える」をモットーに、家づくりについて研究中。
日々、住まいを改造・改築しながら、快適な家づくりを目指している。
趣味:スケート観戦、ハンドメイド(羊毛フェルトでなんでも作る)、間取り図を見ること、旅行。
2匹の犬と暮らして溺愛中。

・「車椅子ライターmaiのひとこと」一覧はこちら。

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