二世帯住宅に相続税がかかるのは何故? 新築時に考えておくべき相続の話

二世帯住宅は誰のもの?

二世帯住宅を建てると、後になって相続税がかかることがあります。自分たちで建てた家のはずなのに、どうして相続税がかかるのでしょうか。

ポイントは、二世帯住宅の持ち主が誰なのか、ということです。法的にいうと「所有者として登記されている人」です。

吉事である住宅施工の際に考えたくなるような話ではありませんが、一般論として親世帯のお父様・お母様は、子世帯の旦那様や奥様よりも早くお亡くなりになるでしょう。そのとき、お父様・お母様が「所有者として登記」されていると、二世帯住宅を「相続」する手続きが必要になるのです。

共有登記の持分割合について

じつは、二世帯住宅の所有者として、親世帯のお父様・お母様が登記されているケースは、決して少なくありません。

なぜなら、登記は原則として「自己資金や住宅ローンの負担額の比率に準じて行うべき」だからです。その理由は、こちらの過去記事で紹介しています。

・住宅の共有名義の落とし穴って? 持分割合を決める際のポイント

二世帯住宅の場合、子世帯の旦那様と奥様だけではなく、親世帯のお父様・お母様も資金を負担することが多いです。必然的に、子世帯と親世帯にまたがった「共有登記」をするか、1階部分が親世帯、2階部分を子世帯といったのように、別々の建物として登記する「区分登記」をすることになります。

二世帯住宅を「相続」しなければならない理由

二世帯住宅の所有者として、親世帯のお父様・お母様が登記されていたとしましょう。するとお父様かお母様が亡くなられたとき、登記された二世帯住宅の持分を、子世帯の旦那様か奥様が、財産として相続することになります。

家や土地の金銭的な価値は、「固定資産税評価額」によって決められています。固定資産税評価額は市町村によって多少の上下はありますが、地価公示価格(いわゆる時価)のおよそ70%となっています。

仮に、固定資産評価額が2,000万円の土地に、固定資産評価額が2,500万円の二世帯住宅を建てたとしましょう。その土地と住宅の両方について、お父様の持分として1/2が登記されていた場合、お父様がお亡くなりになったときの遺産額はこのようになります。

(2,000万 + 2,500万) × 1/2 = 2,250万円

つまり、お父様が亡くなられた時点で、2,250万円の財産の相続をどうするかという問題に直面する訳です。

二世帯住宅の登記をする際には、いずれ相続となったときに相続税をできるだけ節税できるよう、あらかじめ考えておくことが大切です。

相続税の税額

相続税は、相続する金額が多いほど税率が高くなる、累進課税制度になっています。

しかし相続税は、相続する財産の全額に対してかかるわけではありません。

相続税を計算するには、まず相続財産から「基礎控除額」を差し引きます。その残りの金額を、民法に従って相続する人に分配します。その上で、相続人それぞれが相続した金額に対して、個別に相続税を計算することになります。

相続税の基礎控除額は、法律によって定められた法定相続人の数によって決まります。具体的な計算方法は、以下の通りです。


法定相続人が2人の場合:3,000万 + 600万×2 = 4,200万円
法定相続人が3人の場合:3,000万 + 600万×3 = 4,800万円

相続する財産の総額が基礎控除額以下だった場合は、相続税は一切かかりませんし、申告する必要もありません。ただ、この金額を超えてしまった場合は、剰余分について相続税が発生します。

たとえばお父様の遺産総額が、不動産や預貯金や有価証券などを合わせて1億4,800万円あったとしましょう。それをお母様と長男・長女の子供2人で相続する場合、基礎控除額の4,800万円を引いた1億円に対して相続税がかかります。

その1億円をお母様が1/2、子供2人が1/4ずつ相続すると、お母様の相続金額は5,000万円、子供はそれぞれ2,500万円となります。それぞれの相続金額に税率をかけると、以下のようになります。


お母様:5,000万 × 20% = 1,000万円
長男:2,500万 × 15% = 375万円
長女:2,500万 × 15% = 375万円

さらにこの金額から、定められた控除額を差し引いた金額が、実際に払わなければならない相続税額となります。相続税の控除額については、税率と同じように相続する金額によって変わってくるので、詳しくは下記の表を参照してください。

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

上記の例でいうと、お母様が支払う相続税額は800万円、長男・長女はそれぞれ325万円となります。

土地や建物の相続の場合、遺産額 = 固定資産評価額

住宅や土地などの固定資産を相続する場合、その家や土地がどのくらいの価値を持っているか、金額に換算しなければなりません。

その換算には、「固定資産評価額」が適用されます。実際に土地を購入した金額や、家の建築にかかった金額ではありません。

固定資産評価額については、以下の記事で詳しく解説しています。

・住宅の購入にかかる不動産取得税とその減税内容とは?

具体的な相続税額の計算

では、固定資産評価額が2,000万の土地に、2,500万の二世帯住宅を建てたとして、相続税額を計算してみましょう。1/2の持分を保有するお父様が亡くなった場合、どのくらいの相続税がかかるのでしょうか。

この二世帯住宅は、土地と建物を合わせて4,500万円の価値があるとみなされます。お父様の持分は1/2ですから、遺産の総額は2,250万円となります。

法定相続人がお母様と子世帯の旦那様の2人なら、遺産から基礎控除額4,200万円が差し引かれてマイナスとなるので、相続税はかかりません。

もし、お母様は相続放棄をして、子世帯の旦那様ひとりで相続するとしたらどうなるでしょうか。

その場合、最初の基礎控除額が減るのではないかと考えそうなものですが、そんなことはありません。相続税の計算では、実際に相続するかどうかは別として、法定相続人の数によって基礎控除額が差し引かれるのです。

ですからこの場合、子世帯の旦那様ひとりで相続しても、相続税がかからないことに変わりはありません。

二世帯住宅と「小規模宅地等の特例」

二世帯住宅に相続税がかかることがある、というのは、ここまでの解説で分かっていただけたかと思います。

しかし相続する遺産が住宅の場合には、「小規模宅地等の特例」という制度があります。それを知っておくことで、相続税額をさらに軽減できます。

二世帯住宅を建てる場合には、後に発生する相続についても考えておくことが大切です。

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