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ホールダウン金物の役割と、耐震性・気密性の相互関係
阪神・淡路大震災の教訓から定められた「ホールダウン金物取り付け」
ホールダウン金物とは、木造住宅で使用する特別なボルトで、地震や台風などの外からの強い衝撃で、柱が土台から抜けないようにするために取り付ける金具です。
2000年の「建設省告示1460号」において、ホールダウン金物の取り付けが定められています。
このホールダウン金物、一体何のために取り付けるべきで、どのようにして効果を発揮するのでしょうか?
地震力で家の柱が抜けてしまう!?「ホールダウン金物」が柱を守る!
柱の脚元の部分を「柱脚」と言いますが、ホールダウン金物はその柱脚に取り付けることで、地震の時に柱が土台から引き抜けてしまうことを防ぐ部品です。
地震力が柱を引き抜いてしまうのは、以下の挿絵のような原理によります。
ここで、柱にはたらく引き抜き力は、強い耐力壁であればあるほど大きくなっていきます。
また、同じ強度の耐力壁であっても、耐力壁の位置によって引き抜き力は異なります。
一般的に、建物の四隅が最も引き上げ力が強いと言われています。
しかし、だからと言ってホールダウン金物を建物の四隅の柱だけに取り付ければ良いかというと、必ずしもそういうわけではありません。
では、一体どのようにホールダウン金物を取り付ければ、地震で柱が引き抜かれない、安心な家になるのでしょうか?
地震に備える「ホールダウン金物」効果的な設置のための方法は?
引き抜き力は上向きにかかる力ですが、柱には重力という、下向きにはたらく力もかかっています。
なお、ここで言う「重力」の要素とは、「柱の自重+支える建物の重さ+積載する家具の重さ」を指します。
ここで、重力が引き抜き力を上回る力であるうちは、重力が引き抜き力に打ち勝っていますから問題は起こりません。
ところが引き抜き力が重力を上回るという、逆転現象が生じ、その差が1トン以上になってしまうと、構造部が破断してしまうリスクが生じてきます。
これを防ぐために、脚注部にホールダウン金物を設置し、「重力+ホールダウン金物による抵抗力 > 引き抜き力」という状態を維持して破断のリスクをなくすのです。
そのため、ホールダウン金物の最も効果的な配置方法は、構造計算の中でそれぞれの柱にかかる引き抜き力を計算して、引き抜き力から重力を差し引いた強さの金物を使うという方法です。
この方法であれば、無駄なく効率的にホールダウン金物を使用することができるので、一番安価で安心な方法です。
構造計算を行わない場合、建物の四隅だけにホールダウン金物を入れることが多いですが、構造計算を行う場合、必ずしも角だけにホールダウン金物を入れるとは限りません。
東日本大震災、熊本地震のような巨大地震に備えて
ホールダウン金物を取り付けることで、地震力によって柱が引き抜かれることを防ぐことができます。
しかし、ホールダウン金物を備えているから絶対に柱が引き抜かれることはない、安心だというわけではありません。
過去に例を見ないような非常に強い地震力を受けた際には、ホールダウン金物自体が破断(物体が引っ張り力を受けてちぎれること)したり、破断まではしないまでも湾曲してしまったりすることがあります。
実際に先の新潟県中越地震や、熊本地震においてそのようなケースがあり、倒壊を免れた住宅でも柱が床から抜けてしまい、気密性が著しく下がったという報告があります。
このような状態では、地震による倒壊を免れても、家としての機能は損なわれてしまいます。
気密性が下がることの影響は様々ですが、「家の外を通る車の音がうるさく感じられ、静かな暮らしが損なわれた」という方もいます。
その後のマイホームでの生活を考えるのなら、倒壊をしないだけでなく、震災後も気密性や断熱性が保たれる耐震性能が求められます。
ですから、ホールダウン金物のみに頼るのではなく、耐震性を確保するための構造計算がとても重要になってきます。
可能なかぎり地震力を分散させ、家の部材を壊さないための設計が必要になってきます。
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