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突然の相続の際に知りたい、家の解体費用と手続きのこと。
「家の取り壊し」という辛い決断をする時
「家」は日常生活を送るための、ただの道具ではありません。そこで暮らした年月の思い出が詰まった、かけがえのない宝物です。できることならそのままの姿で、永遠にとっておきたいものです。
しかし、どんな家でもいつかは古びていきます。日本の気候風土もあって、以前は「木造住宅の寿命は約30年」と言われていました。現在では長期優良住宅など100年近く長持ちするハイグレード住宅もありますが、昭和期の技術で建てられた家は、すでに寿命を迎えていると考えていいでしょう。
家の老朽化は、風雨にさらされる屋根や外壁から始まります。外壁に少しでもひび割れや破損があると、そこから雨水が入り込みます。すると柱など内部の構造体が劣化し、耐震強度が下がってしまうのです。
さらに給水管や配水管といった配管設備も、30年以下で寿命を迎えます。すると水漏れなどのトラブルが起こり、構造体をさらに痛める結果につながってしまいます。
ご両親にご不幸があって家を相続することになった場合も、すでに寿命を迎えた家では安心して暮らすことができません。それほど古くなっていない家でも、さまざまな事情を考えた結果、「取り壊し」という辛い決断をしなければならないこともあります。
いざ取り壊すに当たって、さらにトラブルに見舞われたのでは、淋しさもひときわ身にしみることでしょう。そういった事態にならないためにも、取り壊しの決断されたご家族が知っておきたい情報をご紹介します。
家の解体費用はどのくらいかかる?
現代の日本では、住宅の約半分強が木造住宅です。しかし、鉄骨造やマンションのような鉄筋コンクリート造も年々増えてきています。
木造と鉄骨造と鉄筋コンクリートでは、当然のことながら取り壊しにかかる手間や機材が変わってきます。その結果、取り壊しにかかる費用も変わります。
それぞれに大体の相場はありますが、住宅の建っている都道府県によって相場も違います。傾向として、都市部は取り壊し費用が高くなっています。田んぼや畑に囲まれた広々とした場所なら、周囲を気にせず重機などで簡単に取り壊しができますが、建物が林立する都市部ではそうはいきません。
小型の機材での取り壊しには日数がかかるため、その分の人件費がかかります。ほこりや廃材が飛び散らないよう、養生シートで覆ったりする必要もあります。まったく同じ構造の建物でも、取り壊し費用は都市部のほうが高くついてしまうのです。
取り壊し費用の坪単価相場は、大体このくらいになっています。
東京都 | 全国平均 | |
木造 | 3万円~5万円 | 2万円~3万円 |
鉄骨造 | 4万円~5万5000円 | 3万円~4万円 |
鉄筋コンクリート造 | 4万5000円~6万5000円 | 4万円~5万5000円 |
たとえば東京都で60坪の木造住宅を取り壊す場合、最低でも180万円程度はかかると思っておいたほうがいいでしょう。
坪単価3万円 × 60坪 = 180万円
ここで上げた坪単価は、建物の解体だけでなく、基礎の撤去や廃材の処理費用、人件費まで含んだ価格です。解体業者によって見積もりに書く項目はまったく違ってくるので、あくまで目安程度に考えておいてください。
住宅の取り壊し作業には、大きく分けていくつかの工程があります。まず足場を組んで、防塵や防音のために住宅を養生シートで覆う「仮設工事」を行います。次にトイレや風呂、ガラスといった設備を手作業で取り除く「内装解体」をします。さらに瓦屋根の住宅なら、瓦の撤去も手作業で行います。
そしてようやく、重機による構造物の取り壊しとなります。ほこりなどが舞い散らないよう、ほとんどの場合は解体と同時に散水も行います。建物の解体が済んでから、土間や基礎部分の撤去作業を行います。
こうした作業工程ごとに、細かく見積もりに書く業者もあれば、廃棄物処理まですべて合算して「工事一式」の金額しか書かない業者もあります。
取り壊しを行う際には、何社かから相見積もりをとって検討することもあるでしょう。あまりに金額が違う場合には、「基礎の撤去までして、最終的には道路と同じ高さの平地になるんですよね」といったように、どこまで工事に含まれているのか確認しておいたほうが賢明です。
金額に差が出るポイントとしては、廃材の処分費用があります。じつは工事費の半額近くは、廃材処分費なのです。住宅の取り壊しで出る廃材は、法律で処分方法が決められているため、通常のゴミのように捨てるわけにはいきません。
大手の解体業者の中には、自社で処分場を持っているところがあります。そういった業者は廃材処分費を抑えられるので、結果として工事費も安くなります。
家の取り壊しの書類手続き
家を取り壊すに当たっては、さまざまな届け出が必要になります。どんな手続きが必要なのか、ひとつずつ見ていきましょう。
電気・ガス・水道などのライフラインの停止
まず解体工事を行う前に、電気・ガス・水道・電話・ケーブルTVといったライフラインを停止しておかなければなりません。手続きは業者によってさまざまで、電話のみで停止できるものや、届出書類を取り寄せて郵送しなければならないこともあります。
取り壊しの直前になって申請すると、停止の処理が間に合わないこともあります。余裕を持って連絡して、確実に止めておきましょう。
建設リサイクル法の申請
延べ床面積が80平方メートル以上の建物を取り壊す場合、工事の1週間前までに建設リサイクル法の届け出をしておかなければなりません。正式名称は「建設工事に係る分別解体等及び再資源化等の届出」といい、工事現場の住所や工事内容などを記した書類を市区町村役場に提出します。
法律では施主が届け出をすることになっていますが、ほとんどの場合は解体業者が代理で行っています。ただ、お施主様はそのための委任状を書かなければなりません。念のため、取り壊しを依頼する際に業者に確認しておいたほうがいいでしょう。
道路使用許可申請
取り壊しに当たって、工事車両を道路に駐めて作業する場合には、道路使用許可の申請が必要になります。申請書に駐車方法を記した図面を添えて、所轄の警察署に提出しなければなりません。
これもほとんどの場合、届け出は解体業者が行います。また届け出には、数千円程度の証紙代がかかります。
近隣説明会などの開催
自治体によっては、取り壊し工事前に近隣への説明会の開催が義務づけられているところもあります。例えば東京都墨田区では、工事の5日前までに説明会を開催して近隣の方への注意を促さなければなりません。東京都北区では、事前に定められた書式の看板を設置して、近隣の方にお知らせしなければならないとされています。
どのような表示や説明が必要なのか、建物のある自治体の役所に確認してみるといいでしょう。この手続きも、ほとんどの場合は解体業者が代行してくれますが、念のために確認しておいたほうがトラブルも起こりにくくなります。
建物滅失登記
土地や住宅を取得した際には、法務局に届け出をして登記簿に記載してもらわなければなりません。反対に建物を解体した際にも、同じように法務局に届け出をして、登記簿から削除してもらいます。この手続きを「建物滅失登記」といいます。
建物滅失登記は、解体工事完了から1ヶ月以内という期限が定められています。その期限を過ぎてしまうと、10万円以下の罰金が科せられることがあるので注意しましょう。
さらに建物滅失登記をしないでおくと、登記簿上では建物がそのまま残っていることになっています。すると、固定資産税がかかってしまいます。余分な税金を課税されないためにも、建物滅失登記を忘れないようにしましょう。
建物滅失登記自体には、登録免許税のような費用はかかりません。法務局の窓口で届け出方法を聞いて、自分で行うこともできます。
解体業者が建物滅失登記まで代行してくれることもあります。代行を依頼する場合は、委任状や印鑑証明が必要になります。また、司法書士や土地家屋調査士などに代行してもらうことも可能ですが、4万円程度の依頼費用がかかると考えておきましょう。
代々の土地を新世代へ受け継ぐ。「建て替え」の選択肢
ここまで住宅の「取り壊し」についての情報をご紹介してきましたが、取り壊しの前に更地にした後の土地をどう活用するのかを考えておくことも大切でしょう。ただ売却するのではなく、新しい住宅に建て替えるという選択肢もあります。
現代の住宅は、外壁などの品質も向上して寿命も長くなりました。80年以上も長持ちするハイグレード住宅なら、お子さんからお孫さんへと受け継いでいくこともできます。そういった住宅を建てることで、土地の資産価値を高めることもできるのです。
建て替えというと「自分たちが住む」というイメージが強いかもしれません。しかし、高い資産価値をもつ新築住宅には、さまざまな活用方法があります。
突然の相続が起こって家屋や土地を得た場合、不動産の活用にまではなかなか頭が回らないかもしれません。でも、土地や家屋の資産価値を将来的にも維持するために、知っておいたほうがいいことはたくさんあります。
思い出の詰まった大切な土地や家を守っていくためにも、いざという時に備えておくのはいかがでしょうか。
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