不動産の運用における「生前贈与」の強みとは?

いざという時に備えて、ご家族全員が向き合うべき問題

時が経つにつれて、家族の形は次第に変化していきます。結婚して子供が生まれ賑やかになる時期もあれば、その子が巣立って落ち着いた雰囲気になることもあるでしょう。

以前は住宅の寿命は30年と言われていましたが、近年はロングライフ住宅なども登場し、家の寿命は飛躍的に延びました。それは同時に、家を建てる時から30年後、50年後の将来的な視点をもっておかなければならないということに繋がります。

将来どんな家族の形になっているのか、その時に家をどう活用していくのかは、ご家族として向き合うべき大きな問題です。縁起でもないことかもしれませんが、家の所有者となっているご夫婦のどちらかが亡くなられた時のことも考えておくべきでしょう。

家は単なる財産ではありません。そこに暮らす家族全員の思いが詰まった、かけがえのない拠り所です。だからこそいざという時のために、家族全員が納得できる方法を今のうちに考えてみてはいかがでしょうか。

生前贈与で実現する「不動産の活用」

例えば、家の所有者となっている旦那様が亡くなられたとしましょう。その財産を誰がどのように相続するかは、3ヶ月以内に決めなければならないと法律で定められています。

しかし、悲しみに暮れているご家族にとって、3ヶ月はあまりにも短すぎます。さまざまな手続きを事務的にこなしていくだけで精一杯というのが、実際のところではないでしょうか。

遺産相続のために家を売却して、その金額を法定相続人で分けるというのなら話は簡単です。でもそれでは、ご家族の思い出が詰まった家はなくなってしまいます。

残されたご家族だけで住むには広すぎるけれど、家そのものは残したいといったご希望もあるでしょう。お子さんが結婚後に同居される予定があるなら、完全分離型の2世帯住宅にリフォームして、子世帯を一時的に貸し出すのもいいかもしれません。

家のある風景を残しておきたいなら、外観はそのままでハウスINハウスのリフォームをして、複数世帯に貸し出せるようにするといった活用方法があります。家の活用方法は、自分達が住むだけではないのです。

しかしいざ相続となった時に、家のさまざまな活用法を比較検討して即座に判断をするのは、かなり難しいといえます。そのためにも、生前から相続時の状況を考えておくことが大切なのです。

不動産の生前贈与のメリット

生前贈与には、いざ相続が発生した時にご家族にかかる負担が軽減できるというメリットがあります。じつは、生前贈与の手続きは名義の書き換えと贈与税の申告くらいで、相続手続きよりも手間がかからずスピーディーに進めることができます。

もし相続が起こったとしても生前贈与をしてあれば、相続の前後にかかわらず安定した運用ができます。残されたご家族の生活の安定を考えると、生前贈与しておいたほうが安心といえます。

また贈与税は、贈与が発生した時点の不動産評価額で計算されます。お住まいの地域の地価が再開発などで次第に上昇している場合、相続時まで待っていると相続税額が跳ね上がってしまう恐れがあります。そういったケースでは、生前贈与の金銭的なメリットも見逃せません。

もちろん、ご家族でよく話し合った結果、生前贈与を行わないという結論になることもあるでしょう。それでも生前贈与を視野に入れることで、ご家族全員が納得のいくまで話し合いの時間を持てるというのは大きなメリットだと思います。

生前贈与にかかる税金(贈与税)と、配偶者控除について

気をつけなければいけないのは、生前贈与には贈与税などの税金がかかること。贈与税の税率は相続税よりも高く設定されているので、税額だけを見ればあまりお得とはいえません。

ただしご夫婦間の不動産の贈与なら、配偶者控除が受けられます。これは夫から妻へ、あるいは妻から夫への不動産の贈与なら、2000万円までは贈与税がかからないという特例です。

贈与税は基本的に、年間110万円までなら贈与税はかかりません。これと配偶者控除を合わせると、2110万円以内の不動産なら、贈与税を支払う必要がないということです。

贈与税の配偶者控除を利用するには、以下の条件があります。この3つの条件をクリアしないと、贈与税の配偶者控除は受けられません。

・結婚している期間が20年以上であること
・贈与された不動産が、贈与された人が住むための住宅であること
・贈与の翌年3月15日まで実際に住んでいて、その後も引き続き住む予定であること

結婚している期間については、婚姻届を出してからの日数で数えます。事実婚の場合は認められませんので、注意が必要です。

また3つめの「その後も引き続き住む予定」については、法律で明確な日数が決められているわけではありません。極端な話をすると「3月15日までは今後も住むつもりでいたけれど、3月16日に事情が変わって住み続けられなくなってしまった」といったケースでも、配偶者控除の適用は受けられます。

これは贈与税の税額が、贈与の翌年3月15日の時点の状況で決定するからです。だからといって、「配偶者控除を受けた翌日3月16日に、不動産業者に連絡して売却手続きをした」といった、住み続ける意思が疑われる場合は、監査が入ることもあります。

配偶者控除を受ける場合には、贈与された不動産が2110万円以内であっても申告が必要です。もし申告に偽りがあったと判断されると、配偶者控除を受けられないばかりか、追徴金を請求されることもあります。

また贈与税の配偶者控除は、同じ夫婦間では一生に一度しかできません。考えにくいケースではありますが、結婚20年で配偶者控除を利用して不動産の贈与を受けた後、離婚して別の人と再婚し、その婚姻期間が20年を超えれば、また不動産贈与の配偶者控除が受けられるようになります。

不動産の生前贈与にかかる経費

不動産の生前贈与を受けた場合、支払わなければならない税金は贈与税だけではありません。不動産を所有した際にかかる不動産取得税と、登記所に保管されている不動産登記簿の内容を変更する登録免許税がかかります。

配偶者控除によって贈与税が0円になったとしても、不動産取得税と登録免許税は必ず支払わなければなりません。2110万円の不動産を贈与された場合、不動産取得税は63万3000円、登録免許税は42万2000円となります。

2110万円 × 不動産取得税(3%) = 63万3000円
2110万円 × 登録免許税(2%) = 42万2000円

もし贈与ではなく、所有者が亡くなってからの相続で不動産を得た場合には、不動産取得税はかかりません。その点は、生前贈与のデメリットといっていいでしょう。

ただ生前贈与の配偶者控除は、不動産そのものの贈与についてだけではありません。家を購入するための資金の状態でも、贈与税の配偶者控除が受けられるのです。

つまり、旦那様おひとりが用意した資金で家を建てたにもかかわらず、資金のうち2110万円を奥様に贈与したことにして住宅をご夫婦の共同名義にしても、贈与税はかからないということです。そうすれば、不動産取得税や登録免許税が新たにかかることはありません。

こういった経費の面から考えても、家を建てる時点から長期的な展望を描くことが大切だとお分かりいただけるのではないでしょうか。

突然の相続の時に慌てないために

どんなハイグレードな家であっても、時間の経過とともに古びていきます。家の建てられた年代や築年数によって、家をどのように活用できるかも変わってきます。

いざ相続となった時に、そういったさまざまな条件まで考慮して、冷静に判断を下すことができる人がどれほどいるのでしょうか。ご家族全員が安心して暮らすためにも、何事もないうちから早めの対策をとっておきたいものです。

リガードでは家作りだけでなく、家を守るためのお手伝いもできればと考えています。その一環として、「突然の相続」に見舞われた際にどうすればよいか、といった相続にまつわる知識をお伝えするセミナーを随時開催しています。ぜひ一度、も足を運んでみてください。

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