まず、試算の前提をそろえます
住宅ローンの試算は、前提が変われば答えも変わります。数字だけが独り歩きしないように、この記事で使う条件を先に開示します。
- 借入額
- 4,000万円/5,000万円/6,000万円
- 返済期間
- 35年
- 返済方法
- 元利均等返済・ボーナス返済なし
- 比べるもとの金利
- 年1.2%(2026年9月時点の変動金利の実勢をふまえた目安)
- 含まないもの
- 事務手数料・保証料・団信の上乗せ分
※この試算は「はじめからその金利で借りた場合」どうしの比較です。実際には途中から金利が上がるため、総返済額の差は表よりも小さくなります(第4章で実例を出します)。金額は万円未満・円未満を四捨五入しています。
そして、0.25%という上げ幅にも意味があります。日本銀行が政策金利を動かすときの、1回あたりの幅の目安がこの0.25%です。ニュースで「利上げ」と聞いたとき、まず思い浮かべるべき単位、と考えていただくとわかりやすいと思います。
0.25%上がると、毎月いくら変わる?
さっそく、数字を見てみます。年1.2%で借りていたローンが年1.45%になった場合です。
| 借入額 | いまの返済額年1.2% | 0.25%上がると年1.45% | 毎月の差 | 総返済額の差35年間 |
|---|---|---|---|---|
| 4,000万円 | 116,681円 | 121,496円 | +4,816円 | +約202万円 |
| 5,000万円 | 145,851円 | 151,871円 | +6,019円 | +約253万円 |
| 6,000万円 | 175,021円 | 182,245円 | +7,223円 | +約303万円 |
※リガードにて試算。前提は第1章のとおりです。金利は銀行・審査条件によって変わります。
借入5,000万円で、毎月およそ6,000円。多くの方が想像していたより小さい数字ではないでしょうか。「利上げ」という言葉の強さと、ひと月あたりの実額のあいだには、それなりの距離があります。
この距離を知っておくことには、意味があります。金額を知らないままだと、ニュースの見出しの強さがそのまま不安の大きさになってしまうからです。まずは、ひと月6,000円という具体的な手ざわりに置き換える。ここが出発点です。
覚え方はひとつ|「1,000万円あたり、月およそ1,200円」
表を覚える必要はありません。借入1,000万円あたりに直しておくと、自分の借入額でいつでも計算できます。
- 毎月の返済額 +約1,200円
- 35年の総返済額 +約50万円
- 毎月の返済額 +約5,000円
- 35年の総返済額 +約210万円
※35年・元利均等での試算。もとの金利が年1.0%でも1.5%でも、1,000万円あたりの増加額は月1,180〜1,240円の範囲におさまるため、おおよその目安として使えます。
使い方は簡単です。借入額を1,000万円で割って、掛けるだけ。4,500万円を借りるなら、1,200円 × 4.5 = 月およそ5,400円。7,000万円なら月8,400円ほど、という具合です。
住宅ローンの相談や、ご夫婦での話し合いのときです。「金利が上がったらどうする?」という漠然とした問いを、「月6,000円ふえても、わが家の家計は回るか?」という答えられる問いに変えられます。判断できる形に翻訳することが、不安をあつかう第一歩になります。

月額だけ見ると、判断を誤る──総額で見た景色
ここからが、この記事のもう半分です。月6,000円は、35年で約253万円になります。月額の小ささと、総額の大きさ。どちらか一方だけを見ると、判断を誤ります。
月6,000円を「小さい」と感じるのは自然なことです。でも、住宅ローンは420回払い。小さな差が、返済期間のぶんだけ積み重なります。253万円は、外構工事やキッチンのグレードアップが一式できてしまう金額です。「月額は小さい、総額は大きい」──この両方を同時に持っておくのが、いちばん正確な見方だと思います。
ただし、この253万円という数字には、大きな但し書きがつきます。第1章で触れたとおり、表の計算は「はじめからその金利で35年間借りた場合」だからです。実際の変動金利が上がるのは、借りたあと。ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
同じ0.25%でも、「いつ上がるか」で影響は半分以下になる
同じ0.25%の上昇でも、それが借りた直後に起きるのか、10年後に起きるのかで、負担はまるで違います。ここを分けずに「0.25%上がると253万円」とだけ覚えてしまうと、必要以上に怖くなります。
理由はシンプルで、利息は「そのとき残っている元金」にかかるからです。返済が進むほど元金は減っていくので、後半で金利が上がっても、利息が乗る土台がもう小さい。借入5,000万円・年1.2%なら、10年で残高は約3,779万円まで減っています。
借入5,000万円・35年・元利均等。年1.2%が年1.45%に上がり、その後は変わらなかった場合
※リガードにて試算。バーの長さは総返済額の差に比例させています。10年後なら約131万円と、借りた直後のおよそ半分。第2章の表は「もっとも影響が大きく出たら」の数字だとお考えください。
だから、気をつけたいのは「借りはじめの数年」
この性質は、備え方にそのまま置きかえられます。最初の数年で上がると影響が大きく、後半なら小さい。裏を返せば、借りてしばらくのあいだに繰上返済などで元金を減らしておくほど、その後の金利上昇に強い形になっていきます。変動金利で「はじめのうちに貯めておく」が効くのは、この仕組みがあるからです。
ひとつめは、現実には「一度上がって終わり」とはかぎらないこと。上の試算は一度だけ上がってその後は横ばい、という単純化です。何度か続けて上がれば、影響は当然その分だけ重なります。
ふたつめは、5年ルールです。金利が上がっても5年間は毎月の返済額を据え置く仕組みを持つ商品がありますが、据え置かれるのは請求額であって、ふえた利息そのものが消えるわけではありません。返済額の内訳が変わり、先送りされるだけです。くわしくは金利の仕組みの記事(金利①)で扱っています。
では、1%上がったら?──変動で見ておくべき数字
0.25%は利上げ1回分です。変動金利を選ぶなら、備えとして見ておきたいのは、それが何回か続いた場合のほうです。
年1.2%が年2.2%になった場合、つまり1%の上昇で、返済額はこう変わります。借入4,000万円なら毎月およそ2.0万円、5,000万円ならおよそ2.5万円、6,000万円ならおよそ3.0万円のプラス。総返済額では、5,000万円の借入で約1,048万円の差になります。
この数字を見て「それは厳しい」と感じるなら、その感覚こそが大事な情報です。金利が上がるかどうかは読めませんが、上がったときに耐えられるかどうかは、いま計算できます。変動金利を選ぶときに確かめておきたいのは、予想ではなくこちらです。
備えは、借りる前のほうがずっとやりやすい
1%上がっても家計が回るなら、変動を選ぶ現実的な根拠になります。回らないなら、打ち手は3つです。借入額を抑えるか、返済額が確定する固定金利を選ぶか、浮いている分を貯めて備えにするか。いずれも、契約したあとより、借りる前のほうがずっと選びやすい打ち手です。
どの金利タイプが自分たちに向いているかは、変動と固定の選び方(金利②)で、家計のタイプ別に整理しています。

試算の数字は、暮らしを削らないためにあります。
返済額の試算は、不安をあおるための数字ではありません。金利が動いても、家族の暮らしを削らずにすむ借入額を見つけるための数字です。月にいくらまでなら大丈夫かがわかっていれば、ニュースが動くたびに揺さぶられることも少なくなります。
わたしたちリガードは、「人が、まんなか。」というブランドコンセプトを掲げています。だから設計に入る前に、土地・建物・諸費用まで含めた資金計画書をおつくりし、総予算をいっしょに確認するところから家づくりを始めています。そのうえで「金利が上がっても回るか」まで数字で見ておくと、性能や間取りの話を、安心して進められるようになります。
まとめ|効いているのは、金利より借入額
最後に、数字が教えてくれたことを整理します。ここまでの試算に共通していたのは、影響の大きさが借入額に比例しているという点でした。
- 0.25%(利上げ1回分の目安)の上昇は、借入1,000万円あたり月およそ1,200円・総返済額で約50万円
- 借入5,000万円なら月6,019円。月額で見れば、ニュースの見出しほどの衝撃はない
- ただし35年の総額では約253万円。月額と総額は、両方をセットで見る
- 効き方を大きく変えるのが上がる時期。借りた直後なら約253万円、10年後なら約131万円と半分以下。利息は残っている元金にかかるため、借りはじめの数年がいちばん効く
- 1%上がれば1,000万円あたり月およそ5,000円・総額約210万円。変動を選ぶなら、備えるのはこの大きさ
- 同じ金利でも借入額が1.5倍なら影響も1.5倍。動かせるのは金利ではなく、借入額のほう
金利は、わたしたちには動かせません。動かせるのは、いくら借りるかと、上がったときのために何を用意しておくかです。数字にしてしまえば、「なんとなく怖い」は「月6,000円なら大丈夫」「月2.5万円は厳しいから借入額を見直そう」という、判断できる言葉に変わります。
ここに出した金額は、条件をそろえて計算した目安です。実際の返済額は、金融機関・商品・事務手数料・保証料・団信の内容・審査条件によって変わります。金利そのものも動きますし、この記事は2026年9月時点の情報です。
ですので、この記事の数字をそのまま結論にせず、ご自身の条件を入れて、ご自身で確かめてみてください。各金融機関のサイトには返済額シミュレーターがありますし、複数の情報にあたって見比べることもできます。判断に迷うときは、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなど、お金の専門家に相談する方法もあります。
住宅ローンは、ご家族にとって大きな決断です。自分で確かめた数字は、人から渡された数字より、ずっと強い判断材料になります。この記事は、そのとっかかりとして使っていただけたらうれしいです。
つづけて読みたい|お金の記事
この記事は、金利シリーズの3本目です。仕組みと選び方は、こちらの記事でどうぞ。



