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住宅ローンの「適正額」はいくら?|年収・金利・ライフプランから考える借入額

「住宅ローンって、いくらくらい借りられるんだろう?」

家づくりを具体的に考えはじめると、最初にぶつかる問いです。金融機関のサイトで、年収をもとにすぐ「上限額」をシミュレーションで出すことができます。情報サイトには「年収の◯倍まで」という目安が並んでいます。

けれど、その数字を鵜呑みにしていいのでしょうか。金利が動いているいま、過去の感覚で借りていい時代ではなくなっています。そして、家計の事情は家族の数だけ違います。

この記事では、世帯年収800万円・借入5,000万円のシミュレーションを通じて、銀行が出す「貸せる額」と、自分たちにとっての「無理なく返せる額」のあいだの差を考えます。家づくりを検討中のお客さまに、少しでも気づきが提供できれば嬉しく思います。

金利は上昇局面|「借りられる最大」のリスクが高まっている

2024年から、住宅ローン金利は段階的に上昇してきています。過去10年の「ゼロ金利時代の感覚」のまま借入額を決めると、後の返済が想定以上に重くなる可能性があります。

2026年5月時点で日本銀行の政策金利は0.75%。直近数年で段階的な利上げが進み、住宅ローン金利も少しずつ上向いてきています。数年前に借りた人と、いまから借りる人では、同じ借入額でも月々の返済額が変わってきます。

2026年5月時点の金利水準(目安)
変動金利:年0.9〜1.1%台が中心
フラット35(21〜35年・融資率9割以下):年2.71%〜(最低金利)
・日銀の政策金利は0.75%

こうした環境では、「銀行が貸してくれる最大額」で借りるのは、過去よりもリスクが高い選択になってきます。ここからは「借りられる額」と「無理なく返せる額」を、数字で分けて見ていきます。

銀行がいう「借りられる額」の一般論

まず、世の中で語られる「借入額の目安」を整理しておきます。よく聞く「年収の◯倍まで」「返済負担率◯%以内」という指標が、実際にどんな数字なのかを確認します。

年収倍率の実態

住宅金融支援機構の「フラット35利用者調査(2024年度)」によると、実際に住宅を取得した方の年収倍率は次のとおりです。

取得した住宅年収倍率(平均)
土地付き注文住宅7.5倍
注文住宅6.9倍
マンション7.0倍
建売住宅6.7倍

つまり、土地から購入して家を建てた方は、平均で年収の7.5倍を借りている計算です。世帯年収800万円なら、約6,000万円。多くの銀行も、これと近い水準まで貸し出します。

返済負担率の上限

銀行が審査で見るもう一つの指標が「返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)」です。フラット35の場合、上限はこのように定められています。

  • 年収400万円未満:返済負担率30%以内
  • 年収400万円以上:返済負担率35%以内

民間銀行もおおむね同水準(35%程度)を上限としています。年収800万円なら、年間280万円・月23万円の返済まで「審査上は通る」計算です。

大事なポイント
これらの数字は、あくまで「銀行が貸してもいい」と判断する上限です。「無理なく返せる額」を保証する数字ではありません。
銀行は審査時の収入で「貸せるか」を判断します。その先のライフプラン(教育費・老後・転職・病気・転勤)は、銀行の責任範囲ではありません。

シミュレーション|借入5,000万円、金利1%と2%でいくら変わるか

ここから、具体的なシミュレーションで見ていきます。世帯年収800万円のご家庭が、借入5,000万円・35年返済を組む場合、金利1%と2%でどう変わるかを確認します。

シミュレーションの前提
世帯年収(額面):800万円(共働き想定)
家族構成:夫婦+子2人(小学生)
世帯主の年齢:30代前半
借入額:5,000万円
返済期間:35年
返済方法:元利均等・ボーナス返済なし

月々の返済額と、35年の総返済額

金利1.0%金利2.0%差額
月々の返済額約14.1万円約16.6万円+約2.5万円
年間の返済額約169万円約199万円+約29万円
35年の総返済額約5,928万円約6,957万円+約1,028万円
うち利息総額約928万円約1,957万円+約1,028万円

金利1%上がると、35年間の総返済額の差は
約1,028万円
同じ5,000万円を借りても、金利2%なら金利1%より約1,000万円多く払うことになります。

金利は契約時の数字で固定されるとは限りません。変動金利を選んでスタートした場合、35年の途中で金利が上がれば、月々の返済額も増えていきます。「いま月14万円なら払える」という判断だけでは、35年先まで見通せたとは言えません。

金利のタイプ選び(変動か固定か)は、別の記事であらためてご紹介します。ここでは、「同じ5,000万円でも、金利で総額が大きく変わる」という事実だけ押さえておいてください。

「無理なく返せる額」はライフプランから引き算する

次に、家計側から見ていきます。世帯年収800万円のご家庭の月々の手取りは、約55万円(共働きで配分や控除によって変わります)。この55万円を、どう振り分けるかが重要です。

月55万円の手取りから、住居費に回せる額

子2人・小学生のご家庭の支出例で、ざっくり並べてみます。

項目月額(例)補足
食費約8万円家族4人・外食控えめの想定
水道光熱費約2.5万円住宅の断熱性能で大きく変動
通信費約1.5万円スマホ+家のネット
教育費(現在)約4万円習いごと中心・中高で増えていく
保険約2.5万円生命保険・医療保険等
雑費・娯楽約5万円日用品・服・レジャー等
老後・将来貯蓄約6万円2,000万円問題に備える分
固定資産税・修繕積立約2万円戸建ての維持費として別に確保
小計(住居費以外)約31.5万円
残り=住居費に回せる額約23.5万円住居費に充てられる上限の目安

「あれ、23.5万円なら借入5,000万円でも返せそう?」と思われたかもしれません。でも、ここで一度立ち止まる必要があります。

将来の教育費の山を、いま見えておく

子どもの教育費は、年齢とともに増えていく支出の代表格です。文部科学省と日本政策金融公庫の調査をベースにすると、目安はこうです。

  • 子1人・すべて公立コース:幼稚園〜大学までで約1,000万円
  • 子1人・すべて私立コース:同 約2,500万円
  • とくに大学進学時は、入学金+4年間で国公立で約250万円・私立文系で約470万円

進路で幅が大きい支出ですが、小学生のうちの月4万円が、中高で部活や塾、大学進学時にさらに大きくなっていくのが一般的な流れです。

住宅ローンの返済期間は35年。その間に、子2人を社会に送り出し、自分たちの老後資金も用意していきます。いまの家計に残った23.5万円は、住居費だけでなく、こうした将来の支出と分け合うことになる額です。

返済額の目安

専門家のあいだでよく言われる安心して返せる目安は、「月々の住宅ローン返済は、世帯手取りの25%以内」です。世帯手取り月55万円なら、月約14万円以内が一つの目安となります。

先ほどのシミュレーションと突き合わせる
・借入5,000万円・金利1%:月約14.1万円(手取りの約26%)
・借入5,000万円・金利2%:月約16.6万円(手取りの約30%)
専門家がよく挙げる安心して返せる目安は「手取りの25%以内」。同じ5,000万円でも、金利によって家計に占める比重が変わってきます。

ただ借入を抑えるだけも罠|住宅の質を込みで考える

「じゃあ借入を抑えればいいんだ」と、ここで結論を急ぐと、別の罠にはまります。住宅は、初期コストだけで完結する買い物ではありません。建てたあとに毎月かかる「ランニングコスト」が、家の質によって大きく変わるからです。

家づくりには、ざっくり2つの考え方があります。

初期コストは高め、ランニングコスト低め

断熱・気密の性能を高くつくり、光熱費を抑え、修繕の頻度も少なくする方向。月の光熱費が安く、夏冬の冷暖房ロスも小さい。住み心地もよく、長期的な家計が安定する。

初期は安め、ランニングコスト高め

建築費を抑えて借入を小さくする方向。一見ローンが軽く見えるが、光熱費が毎月数千円〜1万円以上多くかかる。修繕の頻度や規模も大きくなりやすく、35年の家計で見るとAを上回ることがある。

たとえば断熱性能の差で、月の光熱費が1万円違えば、35年で420万円の差になります。修繕費・冷暖房機器の寿命まで含めると、その差はさらに広がります。

「借入を抑えるために性能を落とす」という選択は、月のローン返済が少しラクになっても、毎月の光熱費と将来の修繕費でじわじわ家計を圧迫します。初期費用とランニングコストを合計した「生涯コスト」で考えるのが、家づくりの本来のものさしです。

考え方の整理
・適正額は「借入を最小化する額」ではなく、「生涯コストが家計のなかで無理なく回る額」です。
・性能の高い住宅は初期費用が上がりますが、その分、住んでからの月々の負担が軽くなります。借入額そのものより、「ローン+光熱費+修繕費の合計」で家計を見るのがおすすめです。

適正額は「自分たちの数字」でしか出せない

ここまでお読みいただくと気づかれると思いますが、「年収◯倍まで」「手取りの◯%まで」という一般論には、自分たちの事情がほとんど反映されていません。

食費を月8万円で見るか、夫婦そろって料理が好きで12万円かけるか。子どもを公立で育てるか、私立中学から私立大学まで進めるか。老後に向けて月3万円積み立てるか、月8万円積み立てるか。家族ごとに「どこにお金をかけるか」の優先順位は、まったく違います。

だからこそ、一般論の数字を当てはめるのではなく、自分たちの収支と価値観を反映した「ライフプランシミュレーション」をつくることが大切です。

ライフプランシミュレーションで見えること

35年後までの家計の見通し

毎年の収支と貯蓄残高をグラフ化すると、どの時点で家計が苦しくなるかが事前にわかります。

借入額と暮らしの質のバランス

借入を増やすほど暮らしのゆとりが減ります。どこまでなら旅行や趣味の予算を確保できるかが、数字で見えます。

金利が上がっても耐えられるか

変動金利で借りる場合、将来の金利上昇に家計が耐えられるかも、シミュレーションで確認できます。

リガードから
家づくりの予算は、家のことだけでは決められません
リガードでは、家づくりをご検討中のお客さまに、「資金計画相談会」をご用意しています。お客さまの家計・ライフプランをお聞きしながら、住宅にかけられる予算と、住んでからの暮らしのバランスを一緒に考える時間です。
「年収から銀行が出した上限」ではなく、「ご家族にとって無理なく心地よく暮らせる予算」を、数字で見ながらお話しします。ご家族の35年後を考えるきっかけとして、ご利用いただけたらうれしいです。

まとめ

  • 2026年は金利上昇局面。「借りられる最大」で建てるリスクは、過去よりも高くなっている
  • 銀行が出す「貸せる額」(年収倍率7.5倍前後/返済負担率35%以内)は、ご家族が返せる額を保証する数字ではない
  • 借入5,000万円・35年返済で、金利1%と2%の差は月々約2.5万円、35年で約1,028万円
  • 「無理なく返せる額」の目安は世帯手取りの25%以内。教育費・老後資金・修繕費まで引き算してから残る額
  • ただし借入を抑えるだけが正解ではない。住宅の質が低いと光熱費・修繕費でかえって家計が苦しくなる
  • 適正額は一般論では決まらない。自分たちの家計と価値観を反映した「ライフプランシミュレーション」でしか出せない

家づくりのお金は、家のことだけを考えていても答えが出ません。子どもの進学、自分たちの老後、毎月の光熱費、暮らしのゆとり。それらを並べてはじめて、「自分たちにとっての適正額」が見えてきます。

はじめての家づくりで、いきなりすべてを見通すのは難しいものです。判断に迷ったら、まずは一緒に整理することからはじめませんか。

参考:住宅金融支援機構「2024年度 フラット35利用者調査」「フラット35ご利用条件」「【フラット35】最新の金利情報」/日本銀行 総裁記者会見(2026年4月)/文部科学省「令和5年度 子供の学習費調査」/日本政策金融公庫「教育費負担実態調査」/金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年)

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リガードの「資金計画相談会」では、ご家族のライフプランから無理なく返せる予算を、一緒に整理します。
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