おさらい|選べるのは「変動・固定・ミックス」の3つ
まず、選択肢を並べます。大きく分けると変動金利・固定金利・その組み合わせ(ミックス)の3つです。それぞれ、引き受けるものが違います。
金利は半年ごとに見直し。いまいちばん低く借りられる代わりに、将来の返済額は確定しません。金利が動くリスクを、自分たちが引き受ける選び方です。
金利上昇局面では「上がるかもしれない」が現実の話に。上がっても耐えられる家計かが問われます。
(全期間固定)
借りたときの金利が完済までずっと同じ。毎月の返済額が確定するので、将来の家計の計画が立てやすい。金利が動くリスクを、金融機関に引き受けてもらう選び方です。
金利上昇局面では固定金利は先に上がるため、「あとで固定に」が効きにくくなります。
1つの借入を変動と固定に分けて組む方法(夫婦のペアローンで分ける形もあります)。金利上昇の影響を、借入の一部だけに抑えられます。
金利上昇局面では「決めきれないから半々」ではなく、どちらに何割を置くかを考える選び方です。
このほかに「10年固定」などの固定期間選択型もあります。当初の期間だけ金利が固定され、期間が終わるとその時点の金利で選び直しになるタイプです。完済までの返済額が確定するわけではない点が全期間固定との大きな違いで、この記事では話をシンプルにするため、変動と全期間固定を軸に整理します。
いまの局面|変動と固定の差が、集計開始以来もっとも大きい
次に、2026年9月時点の水準を見てみます。いまの局面の特徴は、金利が上がったことそのものより、変動と固定の「差」が大きく開いていることです。
そもそも、なぜ固定は変動より高いのでしょうか。それは固定金利が、「この先何十年、金利がどうなっても返済額を変えません」という約束の値段を含んでいるからです。金利が動くリスクを金融機関が代わりに引き受ける──いわば保険料が上乗せされている、と考えるとわかりやすいと思います。
そしていまは、市場が将来の金利上昇を織り込んでいるため、その保険料が歴史的に高くなっている局面です。フラット35の金利は、現行制度になって以来の高さを更新したと報じられています(2026年9月)。
「差が大きいから変動一択」でも「不安だからとりあえず固定」でも、どちらも早合点です。保険料が高いときこそ、「わが家にとって、この保険は必要か」を落ち着いて考える。それがこの記事の後半のテーマです。
「どっちが得か」で決めない──予想は誰にも当てられない
変動と固定、どちらが得だったかは、完済したときに初めてわかる結果論です。これから30年、35年の金利がどう動くか。それを言い当てられる人はいません。
実際、金利の見通しは専門家のあいだでも分かれています。「この先も利上げが続く」という見方もあれば、「景気次第で止まる、下がる」という見方もある。プロでも読めないものを予想して、わが家の何十年を賭ける必要はありません。「どっちが得か」を判断の軸から、いったん外してしまいましょう。
「上がりそうになったら、固定に切り替えればいい」の落とし穴
よく聞く作戦ですが、実はうまくいきにくい方法です。理由は、前回の記事で見た金利の仕組みそのものにあります。固定金利は、市場の「将来の予想」を先取りして動くため、変動金利が実際に上がるころには、固定金利はもっと先まで上がっています。切り替えた時点の固定金利が適用されるので、「低い固定」にはもう乗れない──後出しでいいとこ取りは、構造上むずかしいのです。
「みんな変動を選んでいるから、うちも変動でいいか」──。たしかに、新しく借りる人の4人に3人は変動型です(住宅金融支援機構の調査・2026年1月)。でも、その人たちの家計とわが家の家計は違います。多数派であることは、わが家が耐えられる理由にはなりません。

決める軸は「わが家は、どちらのリスクに耐えられるか」
予想の代わりに使うのが、この軸です。変動には「返済額が増えるかもしれない」リスクが、固定には「結果的に多く払うかもしれない」コストがあります。どちらならわが家は受け止められるか──それは金利ではなく、家計の形で決まります。
- 借入額が年収に対して控えめで、返済に余裕がある
- 金利が上がっても対応できる貯蓄・毎月の黒字がある
- 繰上返済に回せる余力を残せる見込みがある
- 共働きが続く見込みなど、収入の柱が複数ある
- 半年に一度、金利を確認するのが苦にならない
- 毎月の住居費を確定させて家計を管理したい
- これから教育費のピークなど、支出の山が控えている
- 収入の柱がひとつ、または収入が変わる時期がありそう
- 借入額が大きめ・返済期間が長め
- 金利のニュースのたびに不安になってしまう
※どちらに多く当てはまるかの目安です。全部当てはまる必要はなく、この項目だけで決まるものでもありません。
最後の項目は冗談ではありません。変動を選んで金利のニュースのたびに眠れなくなるなら、その心配の何十年分は、固定の保険料より高くつくかもしれない。家計の数字と同じくらい、心の耐性も大事な判断材料です。
両方に当てはまる・決めきれないときは
変動と固定に分けるミックスが選択肢になります。ただしその前に、一度立ち止まってほしいことがあります。どちらにも振り切れないのは、借入額そのものが家計に対して大きすぎるサインかもしれません。金利タイプの工夫は、借りすぎを直せません。迷ったら、タイプの前に総予算と借入額に立ち返るのが実は近道です。
選んだら終わりじゃない──それぞれの「セットの備え」
変動と固定、どちらを選んでも、それだけで完成ではありません。選び方には、それぞれ「セットの備え」があります。
変動を選ぶなら──「固定との差額」を、ないものとして貯める
取り組みやすい備えのひとつが、これです。固定を選んでいたら払っていたはずの毎月の差額を、最初から「ないもの」として貯蓄や繰上返済の原資に回す。金利が上がらなければそのまま資産になり、上がったときには返済額の増加を受け止める防波堤になります。低い金利で浮いたお金を生活水準に使ってしまうと、この防波堤が育ちません。
あわせて、金利が1%上がっても家計が回るかを、借りる前に試算しておきましょう。毎月いくら増えるのかを具体的な数字で見ておくと、ニュースに振り回されなくなります。自分のローンの見直し月(多くは4月・10月)と、5年ルール・125%ルールの有無も確認しておくと安心です。
固定を選ぶなら──「安心の値段」と決めてから選ぶ
固定を選んだあとに金利が上がらなかった場合、「変動にしておけば…」と見えてしまう瞬間が来るかもしれません。でもそれは、保険が使われなかったというだけのこと。火事にならなかった年の火災保険を「損した」とは言わないのと同じです。差額は返済額が確定する安心の値段──そう決めてから選ぶと、あとから損得で振り返らずにすみます。
そのうえで、固定は借りる時点の金利がすべてなので、複数の金融機関・商品を比較すること。同じ全期間固定でも、金利や手数料、団信(団体信用生命保険)の内容は少しずつ違います。

「どちらを選んでも回る」資金計画から、始める。
変動か固定かは、最後は金融機関の窓口で決める話に見えます。でも実際には、その手前の「いくら借りるか」で、答えの大半は決まっています。無理のない借入額なら、変動でも固定でも家計は回る。借りすぎていたら、どちらを選んでも苦しいからです。
わたしたちリガードは、「人が、まんなか。」というブランドコンセプトを掲げています。だから家の設計に入る前に、土地・建物・諸費用まで含めた資金計画書をおつくりし、金利が上がっても暮らしが回る総予算をいっしょに確認するところから家づくりを始めています。金利タイプの相談も、その土台があってこそ。わが家の数字で考えられる状態を、まず整えるお手伝いをしています。
まとめ|答えは金利ではなく、わが家の家計の中にある
- 選択肢は変動・固定・ミックス。いまは変動と固定の差がおよそ2ポイントと、集計開始以来もっとも大きく開いた局面(2026年9月時点)
- 固定の高さは「返済額が変わらない安心」の保険料。高い局面だからこそ、わが家に必要な保険かを考える
- 「どっちが得か」は結果論。予想で決めない。「上がったら固定に切り替え」は、固定が先に上がるため効きにくい
- 決める軸は「上がったとき、わが家の家計が耐えられるか」。家計の形と、心の耐性で選ぶ
- 変動なら差額を貯める備えをセットで。固定なら安心の値段と決めてから。迷ったら金利タイプの前に借入額に立ち返る
金利のニュースは、これからも動き続けます。でも、予想に賭けない決め方をした家計は、どちらに動いても慌てません。答えは金利の先読みではなく、わが家の家計の中にあります。
つづけて読みたい|お金の記事
この記事は、金利シリーズの2本目です。仕組みの土台は、こちらの記事でどうぞ。
ここに出した金利や金額は、条件をそろえて整理した目安です。実際の金利や返済額は、金融機関・商品・事務手数料・保証料・団信の内容・審査条件によって変わります。金利そのものも動きますし、この記事は2026年9月時点の情報です。
ですので、この記事の内容をそのまま結論にせず、ご自身の条件を入れて、ご自身でも確かめてみてください。各金融機関のサイトには返済額シミュレーターがありますし、複数の情報にあたって見比べることもできます。判断に迷うときは、金融機関の窓口やファイナンシャルプランナーなど、お金の専門家に相談する方法もあります。
住宅ローンは、ご家族にとって大きな決断です。自分で確かめた数字は、人から渡された数字より、ずっと強い判断材料になります。この記事は、そのとっかかりとして使っていただけたらうれしいです。



